熊谷君と宇佐木さん

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「落とすよっ、って笑顔で怖いこと言うなッ! ていうか、落とすなッ! 落ちたら画面バッキバキになるんだからな、その機種ッ!」 「知ってる~」 「ならやるなッ! 自分がしてほしくないことを他人にもしちゃいけないって教わらなかったのッ!?」 「授業に来てくれれば落とさないよ~」 「脅しッ!? 脅すのッ!?」 「ほらほら~」  ひらひらとスマホを左右に揺らしながら、今にも落ちそうなスマホに熊谷はハラハラする。 「分かった、分かったから落とすなッ! 行くから、行くよ授業ッ! だから返せッ!」  熊谷は冷や冷やしながら階段を下りると、パッとスマホを奪い取った。大事そうに撫で、そしてポケットにしまう。 「やったー! これで内申ゲットー!」 「内申あっても、成績悪かったら意味無いからな」  ぼそりと呟くと、宇佐木が一瞬止まって、それからまた歩きだした。 「大丈夫、大丈夫。から」 「それ一生出さないやつ」 「ねーねー、熊谷君ってどれくらいの頻度で銀色に髪染めてるの?」 「話反らすなッ。2か月に一回だよッ」  熊谷は両手で顔を覆って、はーっと長い溜息を吐くとけたけたと笑う宇佐木の声が聞こえてきた。今日もちゃっかり宇佐木の熊谷であった。
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