<1・どうも、オタクな凸凹カップルです>

1/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ

<1・どうも、オタクな凸凹カップルです>

 デートからの帰りの時間は、満足な気持ちと寂しい気持ちが入り混じる。お別れしたくないと思うと同時に、一日の楽しかった時間をじっくり満喫したいとも感じるのだ。それは隣にいる存在が世界の誰よりも愛しくて、ずっと傍にいたい存在であるからに他ならないだろう。 「凄い人だなあ」  日本一クラスの規模を誇る遊園地は、帰りの電車も混み混みだ。大規模イベントがあったから余計に訪れた人が多かったのだろう。自分の身長だからこそ人波の向こうも見えるが、隣にいる恋人は完全に埋もれてしまっている状態だ。 「離れないようにね、ミナ」 「う、うん」  ユウキはしっかりと、ミナの手を握りしめた。愛しい恋人が歩くたび、ピンクのワンピースのスカートがふわりと揺れる。ヒールのあるブーツを履いてきたのは、ミナなりの意地もあるのだろう。なんせ身長が155cmしかないのである。10cmくらいプラスしても、ユウキの身長には到底及ばない。なんせこっちは178cmだ。ちょっとでも同じ目線に立ちたい、という可愛い恋人の願望である。それがまたいじらしい。が、そのヒールが突っかかって、非常に歩きづらいのは失敗だったようである。  その手を強く引っ張りすぎないよう、それでいて離さないよう、ユウキは全身で気を付けなくてはならなかった。階段を上りきると少しは開けた場所に出る。ぷはあ、とミナが詰めていた息を吐くのが分かった。 「し、しんどい……!わかっていたけど、ほんとネズミーランドの混雑やっばい!」 「お疲れ様。完全に頭埋もれてたな、ミナ」 「ほんとだよ!しかも今回はコスプレイベントだったからみんなコスプレしてて、その分横幅もやばいからさあ!」  今回、ユウキとミナが参加したのもそのコスプレイベントである。日頃からコスプレイヤーとしてオタク活動に勤しんでいる自分達は、今回初めてネズミーランドの大規模コスプレイベントに参加したのだった。ユウキは王子様の格好、ミナはお姫様の格好である。更衣室が混むのがわかっていて既に二人とも普段着に着替えてはきたものの、周囲の多くの参加者たちはそうではなかった。更衣室が大行列だったため、諦めてコスプレのまま家に帰ることを決めた者が多かったのだろう。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!