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それだけを言って、あとは涙がこぼれて喋ることが出来なくなってしまった。情緒がすごい不安定だ。でも泣きながら両腕を広げると、思い切り抱きしめてくれる人がいた。なんて幸せなんだろう。
「三年半後に帰ってくるから」
「魔法使いになって?」
「うん。魔法使いになって、由香里ちゃんをもらいに行く」
「絶対ね」
「うん。絶対」
目尻に溜まった涙を吸い取りなから、恋人が約束してくれる。そうしておでことおでこを擦り合わせ、目を合わせてキスをして、指を絡ませ合い、肌をなぞり合って。二人でいられる初めての夜を堪能した。
◇◇◇◇◇◇
あれから半年後の二月十三日。私は国際空港の搭乗口のベンチに座っていた。
もちろん目指すはドイツ。初めての彼氏のお家、正確には大学寮を訪問だ。
「この時期のヨーロッパって本気で寒いし日照時間短いし、観光シーズンじゃないけどいいの?」
オンライン通話で耀くんと話したときに、何度もそう聞かれた。彼的にはせっかく来てくれるのだから、気候の穏やかな観光に適した時期に来て欲しいのだろう。
「私の目的、分かってるでしょう?」
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