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ちょっとむくれた口調で切り返す。そうすると耀くんは嬉しそうに微笑んで、毎回小さく「ありがとう」とつぶやいた。
二年後にまだ同じ気持ちなら、打ち明けて。
その言葉よりも半年前倒して始まった付き合いだけれど、やはりオンライン上でしか会えないのは寂しさがつのる。大学三年生となれば就活も始まるわけだし、今この時期を逃したら、次にいつ行けるのか分からない。幸いにもバイトに精を出したお陰で旅行費は自力で捻出できた。あとは行動あるのみ。
次第に浮かんでくる微笑みを、本を読むふりをしてごまかす。一人浮かれている旅行客なんて、怪しすぎる。
でも。
私は時計を確認すると、文庫本を入れるついでにバッグをそっと撫でた。この中には耀くんに渡すチョコが入っている。二年前と同じく、手作りのトリュフチョコ。今までの気持ち、これからの気持ちを込めて渡すんだ。明日の今頃、きっと二人は一緒にいる。
空港のアナウンスが流れ、自分の乗る便の搭乗が知らされた。立ち上がると、搭乗口に向かって歩きだす。
私はこれから、未来の魔法使いに逢いに行く。待っていてね。
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