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その2
ナレータ:蒲池が自転車を止めた壁の向こう側には既に先客が居たのだ。
今年二十歳に成る蒲池よりは少し年上のような、清楚な感じの女性が居た。
蒲池を驚かしたと察したその彼女は思わず謝罪をしてしまった。
主人公蒲池:「いいえ、こちらこそ驚かせてしまって・・」
先客:「うふふ・・」
視聴者:夫(そんな簡単に笑うか? 嘘みたいやな!)
視聴者:妻(ちょっと、静かにして~な!)
ナレータ:蒲池が社交辞令のつもりで『いいえ、こちらこそ・・』と返した言葉に彼女が何故か苦笑している。
主人公蒲池:「僕なにか? なにか可笑しいこと言いましたっけ?」
先客:「だって、驚いたのはあなたの方じゃなかった?」
主人公蒲池:「あっそうか、イヤ~自転車で向こうから走って来た時には、人が見えなかったもので、てっきり誰も居ないもんだと・・イヤ~思い込みって怖いですよね」
先客:「うふふ・・」
主人公蒲池:「えっ僕、また何かおかしなこと言いました?」
先客:「だって、『イヤ~』って言葉、何度も仰って、どうやら貴方の口癖のようですね・・」
視聴者:夫(こんなん絶対オカシイって、普通・・初めてと言うか、知らん人と、こんな風にいきなり話が弾むことなんか有り得ん!警戒するやろ⁉普通は・・これはオカシイって⁉)
視聴者:妻(そらぁ~お父さんは歳取ってるからと、違う⁉ 今の若い人ってウチらの時代と違うて、ず~と社交的なんやで⁉)
視聴者:夫(そらぁ、若い時のお母さんは健気やったもんな~)
視聴者:妻(なんやのんそれ、今は違うんかいな? 嫌味かいな⁉)
平日にも拘らず自宅でテレビドラマを楽しむ視聴者夫婦、50歳前後のまさに働き盛りだというのに、もしかして今日が定休日なのだろうか?
先客:「でも、自転車ここに置いてバスに乗るのって、自転車大丈夫なんですか?」
主人公蒲池:「イヤ~バスには乗りません、『とんだ』の駅までは自転車で行くつもりですが、なにか不味いことでも?」
先客:「だって・・それならどうしてバス停なんかに立ち寄られたの?」
視聴者:夫(ホンマや、正直に言え! ナンパするつもりやったって、正直に言うたらどないや!)
視聴者:妻(お父さん止めて言うてるでしょ、ホントロマンが無いんやから)
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