その1

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その1

主人公蒲池:「やっぱり思った通りだ! やっぱり西の空が真っ黒じゃないか⁉ 急がないと駅に着くまでにずぶ濡れになってしまう・・」 ナレータ:蒲池は走り出した。いや正しく表現すれば跨って(またがって)いた自転車の速度を上げたのである。 視聴者:夫(・・自転車の速度を上げたて⁉ それは嘘やろ、バイクと違うんやから、それも言うなら『ペダルに掛かる足には更なる力をいれた』とか、(わし)はそのほうがエエと思うけどな⁉) 視聴者:妻(お父さん、少しは黙ってテレビ見られへんの! 毎度まいど、テレビのナレーションに突っ込み入れたって、向こうには聞こえて無いやから)  テレビドラマを見ているこのご主人、時折テレビに向かっては突っ込みを入れる癖があるようだ。 またこれに輪をかけたように傍に居た妻も、旦那の独り言に突っ込みを入れる。 主人公蒲池:「あっ、あそこにバス停が有ったんだ、そうだあのバス停なら屋根があるし、少し雨宿りしていこう。このままじゃ『とんだ』の駅に辿り着くまで雨にやられてしまう・・」 ナレータ:蒲池の通う大学のクラブ舎はひと気の少ない山間(やまあい)に位置するため、駅までの道のりは、農家がちらほらでコンビニすら見当たらない田舎の一本道である。  今にも降りそな空模様にとても駅までは間に合わないと考えた蒲池は、そのバス停で雨雲をやり過ごすことにした。 蒲池はバス停の横の壁に持たせるようにして自転車を止めると、急いでバス停内に回り込んだ。だが次の瞬間・・ 主人公蒲池:「はっ! ビックリした!~」 先客:「あっ、どうもすみません・・」
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