あとがき+おまけ

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あとがき+おまけ

 初めましての方も、前作からの方も、ここまで読んでいただいてありがとうございました。紋白彗椰と申します。  前作の『アリス・バセットの受難』を読んでいただいた方には、え、短! と思われたかもしれません。  ですが、これでも本来は長編に入るそうで……私も中編ぐらいかな~などと思って調べてビックリしてしまいました。  この『急啓、悪役令嬢様、今すぐ僕と婚約破棄してください草々。』は、アリスを書いている時にふと思い立って最初の五万文字程を一気に書き、その後しばらく放置していました。  それからアリスを書き上げてこちらを書きだしたものの、何故こんな事をしようと思ったのかと思う程書きにくくて、もう本当に四苦八苦した作品でした。  それでも書き始めたらもうこの世界が出来上がってしまっている訳ですから、最後までどうにか書かなければ、という思いから出来上がった作品です。    そして、皆さんに謝らなければなりません。大変読みにくかったと思います、ごめんなさい!  ご存知の通り、ギルバートは心の声と表の声が著しく乖離しています。何なら真逆の事を考えていたりするのですが、文字色を変えるとか出来たらもう少し読みやすかったのだろうか……と、何度も悩みました。  悩んだ挙句この状態に落ち着いたのですが、あらすじに注釈でも入れた方がいいんじゃないかと思うレベルの読みにくさだっただろうな、と言うのは私自身が一番実感しております。なので、めげずに最後まで読んでくださった方には、本当に感謝しかありません。ありがとうございました!    無口で人見知りなギルバートは、心の声はどんどん語ってくれるのですが、私にも人見知りをしていたのか、結局最後まではっきりとギルバートという人を掴めないまま、ただの白パン中毒の人みたいになっていたのはここだけの秘密です。  そして周りの人達はサイラスを筆頭に、恐らくギルバートよりも優秀なのだろうと思っていたりします……。  作中に出て来たキャンディハートさんは、前作のライラが心酔していた謎のポエマー、キャンディハートと同じ人です。  しょうもないポエムを書くのですが、何故か熱狂的なファンがそこらかしこに居る謎のポエマー。性別も年齢も分かりませんが、これからも名前だけちょこちょこと出て来るかもしれません。    それでは、前作の『アリス・バセットの受難』と、ちょっと不思議なミステリー『迷宮事件奇譚』の方も、どうぞよろしくお願いします♪  ここまでお付き合い、ありがとうございました!     おまけ  ギルバートは腕の中で動く小さな赤ん坊に、涙をボロボロと零しながら驚愕した。 「全身……白パンだ……」  ポツリと言ったギルバートに、ベッドに横たわって疲れた表情をしたシャーリーがギルバートに手を伸ばして来た。  ギルバートはその手を掴んで手の甲にキスする。言葉は無くとも、そのどこか誇らしげな顔を見てシャーリーが何を言いたいのかがすぐに分かったのだ。 「ありがとう、シャーリー。この子に会わせてくれた事、そして君が無事だった事に心から感謝する。本当に……ありがとう。疲れただろう? 僕はここに居るから、ゆっくり休んでくれ」 「泣かないで、ギル……本当に……泣き虫なのね」 「ああ。普段どれほど我慢しているか。けれど、今回は嬉し泣きだ。許してくれ」 「ふふ……生まれて来てくれた事に嬉しくて泣いちゃうパパは……とても素敵だと思うわ」  そう言ってシャーリーは嬉しそうに笑うと、そのままギルバートの手を握りしめたまま寝落ちてしまった。  休めとは言ったが、まるで意識を失ったかのようなシャーリーにヒヤっとしたギルバートは、すぐさまモンクを呼びつけてシャーリーの容体を見てもらう。  モンクは既に疲れ切っていた。シャーリーのつわりが始まった辺りから、下手したら5分おき間隔でこうして呼ばれるのだ。何の仕事も出来なくて、とうとう一時的にシャーリーの寝室の隣の部屋で研究していた程である。 「大丈夫です、王。眠られているだけですから。本当に大丈夫ですから」 「本当だな? 信じていいんだな?」 「信じて下さい。大丈夫ですから!」 「そうか……【だけどな、本当に心配なんだ! 何せシャーリーは華奢だし全身フワフワで桃のようだろう!? 突いたらそこから傷んできそうだろう⁉】」  何か言いたげなギルバートを見てモンクはため息を吐くと、仮眠を取りに部屋に戻ってしまった。  ギルバートはベッドの隣に置いてある椅子に腰かけて、生まれたばかりの赤ん坊をあやしながらシャーリーの顔と赤ん坊を何度も何度も見比べては笑みを零す。  この後、ギルバートとシャーリーは子育てに追われる事になるだろう。本来は乳母に預けられる赤ん坊だが、ギルバート達はそれを断った。  やれる所まで自分達で育てたかったのだ。そして大きくなったら、一緒に毎朝コッコちゃんとピッピちゃんの卵を取るのだ。それが今のギルバートの密かな夢である。 「シャーリー、ありがとう。君も、生まれてきてくれてありがとう」  ギルバートは赤ちゃんと眠るシャーリーのおでこに口付けて、窓から入って来る爽やかな風に目を細める。  とても穏やかな、ある晴れた日の出来事だった――。
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