YES,BOSS

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顔をおずおずとあげだジョンは気弱な性格だ。彼はデービッドの秘書として随分長いが、彼女を作ったという話を聞いた事もなければ週末のクラブでハイになって気づけば道路で寝ていた、なんて事もないらしい。 顔はまあまあ良いのに、もったいない事だ、とデービッドは思う。 「そうだよジョン。君の人生は寂しすぎる。男にはなぜ股間にぶら下がっている物があると思う?排泄をするだけならストローで充分さ。私のアレが大きいのは、女性と濃密な時間を過ごす為だよ。いいかジョン、君だって不感症なんかじゃないんだろう?いいかね、ジョン。今度の週末にはスーツを脱いで、流行りのジャケットを羽織り、ダサい眼鏡をゴミ箱に捨て、その真面目くさった髪型をやめて近くのバーにでも行きたまえ。君は自分では解らないだろうがなかなかハンサムだよ」 椅子にかけていたジャケットを羽織りながら、デービッドはウィンクをした。ジョンは曖昧な笑顔をしている。 そろそろクライアントとの時間だ。これまた美しい女性だったと思い出していると、ボス、と声がした。ジョンがこちらを見ている。 「どうしたんだジョン」 「実は…私、好きな人がいるんですが、学生の頃は勉強と資格のテスト、社会人になれば恋人は書類とクライアント、どう接していけばうまくいくのか解らないんです。ボスのように女性の扱いがうまい訳でもないし、この年でまだ…その…経験がない。相手は経験豊富だし、笑えないジョークもうまい。年上なんですが、とても情熱的で、セクシーで、私にはとても見合わない人だ。けれど、好きなんです」 「おいおいジョン、君って奴は年増が好きだったのかい?参ったな、そうか…」 デービッドは苦笑しながらもジョンに近づき激励を込めて肩を叩いてやった。 ジョンは照れている。息子のようなジョン。デービッドは彼を愛しく思っている。決して器用ではない青年だが、信用できる青年だ。 彼の為になにかしてやりたいと思った。 「ジョン、仕事ばかりしていてはつまらない人間になるぞ」 「はいボス、その通りです」 「しかし君は今から変わるんだ。アタックだよ。情熱的な男に君は変わるんだ」 情熱的、とジョンは手帳に書いた。メモの準備は万全だ。 「まずは君は見た目を変えよう。よし、今までの君はクラークケントだ。そしてこれからの君はスーパーマンになるんだ。いいかい、まずは女性に対しては臆病にならない事だ。果敢に攻める。彼女もきっとそれを待っている筈だからね。……君、彼女に嫌われてる?」 「いえ」 「無視は?」 「全く」 「微笑みかけてくれるかい?」 「毎朝」 「それは間違いない、君に好意を持ち、君の気持ちを知っているね。そして君からの誘いがない事を残念に思っている」 「本当に?」 「本当だとも。今度君の家にでも招待して、ワインを飲みながら、甘いキスを交わし、情熱的な…そう情熱的な初体験をするんだよジョン。」 「ああ、ボス、駄目です僕はママと暮らしていて…」 「じゃあホテルだ。ホテルの一室を借り切って、ホテルに来るようにと言った時点で彼女の気持ちが解る筈だしね。よっぽどの馬鹿じゃない限り、男がホテルに誘う理由は一つしかない。そうなれば多少イヤイヤなんか言われたって強引にベッドに引きずり込めば勝利は君の物だ。」 「ああ、感謝します。僕のママに誓って、…本当に」 「私も天国のお袋に誓って君の健闘を祈るよ。今夜9時にアンナにいつものホテルでまつように言っておいてくれ。」 「もし都合が悪いようならどうしますか」 「じゃあ、君が相手をしてくれるかい?そうだね、今週の週末、私も新しい自分にチャレンジする事にしようかな。…じゃあジョン、頑張れよ。お互い楽しい週末を」 「はいボス、お互いに!」
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