ナイト・ルーティン

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   動画配信なんてやるんじゃなかったな。  編集には向いてない、おもちゃみたいな21インチのモニターを見つめながらため息をついた。  キラキラした配信者たちに憧れてはじめた動画投稿。昔から美意識の高かった舞香と桃奈に話すと盛り上がり、三人で美容系チャンネルを立ち上げた。でも、どんなにおすすめの化粧品やスキンケアを紹介してみても、登録者数はいまだに十八人。  公開したら、すぐにファンがつくと思ってたのに。馬鹿みたい。  もうこんなの、やめちゃおっかな……。 「誰、これ」  ぼんやりとパソコンの前で肘をついていると、後ろで舞香が声を上げた。  振り向くと同時に、目の前にスマホの画面を突きつけられた。 「今、うちらのアカウントをフォローしてくれた人なんだけど。見て、フォロワー数すごいのよ」  画面を見ようとしたところで、桃奈がスマホを奪い取った。 「え、REIじゃん! うそ、本物?」 「だから誰よ。知ってんの?」 「知ってんのって、ダイエット系インフルエンサーのREIだよ! 有名じゃん!」  今度は私がスマホを奪った。丸いアイコンの中に、夕日を背に髪をたなびかせてる女性の姿が浮かんでいる。  フォロワー数、十万人オーバー。  桁違いの数に目眩がした。 「有名人? なんでそんな人がうちらなんかフォローするの?」 「知らないよ。えー、うれしすぎる。私、この人の動画いつもチェックしてるんだよねぇ」  ソファで騒ぐ二人をよそに、彼女の投稿を見ていった。〝みんな、おはよう〟〝今日は風が気持ちいいね〟——そんなたわいもない呟きに、女の子たちが絵文字だらけのコメントをつけている。リンクから動画サイトにも飛んだ。〝REIのGOODDAYS〟。チャンネル登録者数は、二十九万人。  REI。名前は聞いたことはある。でも、私は痩せている方だから、ダイエット関連の情報がSNSに流れてきてもいつも素通りしていた。  なんでこんなすごい人が、私たちにフォローを? 「お肌の潤いは毎日の積み重ねが大切! みんなも根気よくお手入れしようねぇ」  パソコンの中で、笑顔の私が薄っぺらい言葉を叫んでいた。  
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