ナイト・ルーティン

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 *  ニュースを見たのは、次の日の朝だった。 「昨日午後七時ごろ、東京都渋谷区の市道で飲酒運転の軽乗用車が歩道に乗り上げ、歩行者一名が死亡しました」  自動車の交通事故。車はたまたまそこに居合わせた歩行者を跳ね飛ばし、女性が一人死亡した。ただ運転手は、女性が突然道を飛び出してきたのだと主張している。  被害者の名前は、坂下桃奈。  ——何、これ。  その日の授業は、まったくといっていいほど頭に入ってこなかった。  窓際の席からぼんやりと外を眺めながら、一日中舞香と桃奈のことを考えていた。いや、二人のことはどうでもよかった。近いうちに待ち受けているかもしれない、自分の未来のことについて考えていた。  親交のあった人間が、立て続けに二人死ぬなんて。  それも同じ死因で。ほんの数日の間に。  そんなこと、あるの?  これは本当に、偶然……?  ぼんやりとしたまま五限を終え、学校を出た。でもこのまま家に帰りたくなくて、行き慣れたファーストフード店に立ち寄った。辺りは私と同年代の学生たちで満席で、クラスの誰と誰が付き合ってるだの、どうでもいい話が飛び交っている。それに耳を傾けていると、ほんの少しだけ心が落ち着くようだった。  なんだか、次は私が事故に遭う番のような気がしていた。  でもやっぱり、そんなことあるわけない。二人が事故で死んだのは偶然だ。  加害者が同じ人物なわけじゃない。意図的に殺されたわけでもない。私たち三人が誰かに恨まれていて、順々に襲われている……なんてことは、ない。  恨まれて、なんて……。 〝あんたなんか、いなくなればいいのに〟 〝もう学校来なくていいよ〟  頭の中に、ある日の言葉がフラッシュバックした。  舞香と桃奈だ。二人は階段の淵に座り、楽しそうに笑顔を浮かべていた。  私はそのひとつ上段に立ち、階下に横たわる人物を静かに見下ろしていた。 〝あーあ、こんなんじゃダメか。いっそどっかで事故って、消えてくれないかなぁ……〟  その瞬間、スマホが震えた。  
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