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いつもと変わらない設定なのに、妙に急かすようにバイブがテーブルを揺らしている。見ると、お気に入りの猫の壁紙の上に、小さな通知画面が浮かんでいた。
慌てて手に取って、同時に、え、と声が出た。
〝REIさんがライブ配信をはじめました 今すぐ動画をチェック!〟
背中がひやりとした。
なんで、REIから通知が。
昨日、REIをブロックしたときに、動画のチャンネル登録も削除したはずなのに……。
見たいわけじゃないのに、指が再生ボタンをタップする。まるで誰かに操られているみたいだ。
画面に映ったREIは、ラフなルームウェアに身を包み、座椅子の上で手を振っていた。
「こんばんは、REIです。みんな、こんな時間に見てくれてありがとう。今夜は登録者数三十万人突破記念、ということで、生配信で私のナイトルーティンを紹介するね。私と一緒に夜のひと時を過ごしてくれたらうれしいな」
REIが挨拶をすると、すでに千を超えている視聴者たちが一斉にチャット欄を賑わせた。REIはスマホを片手に、メッセージのいくつかに答えていく。その姿をじっと見つめた。なにか嫌な予感がして、視線を離すことができずにいた。
REIはひと通りファンたちの反応を楽むと、企画の通り〝いつもの夜の過ごし方〟を紹介し始めた。
低カロリーを心がけているという晩ごはん作り。夜のストレッチ。十分間の読書タイム。視聴者たちもREIの真似をして、あるいは愛ある感想文を彼女に送りながら、同じ時を過ごす。二時間が経つ頃には、店の中には私一人が取り残されていた。
寝る前に焚いているというアロマを楽しんだあと、REIは次で最後、と言って部屋を出た。
カメラとともに移動する。廊下の奥にある別室は、ブラケットライトがいくつかついているだけの仄暗い空間だった。
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