ナイト・ルーティン

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   小さな部屋にはテーブルがひとつ置いてあるだけで、妙にがらんとしている。テーブルの上は飾り台らしく、人間を模した金の像や枯れた草花が供えられてた。REIはその前に仰々しく正座をし、大小さまざまな蝋燭に火を灯すと、背を向けて手を合わせた。  そのまま静止し、数分したのちに顔を上げる。  そして、これはお祈りの時間、と呟いた。 「私ね、小さい頃いじめられてたの」  びくり、と体が跳ねた。  REIはカメラに背を向けたまま、話を続ける。 「体型のことをね、ずっとクラスメイトに言われていて……。つらかった。だからダイエットをはじめたんだ。別に私は、太ってる自分を嫌いとか、醜いなんて思ったことはなかったんだけどね。ただ、そのことを言われ続けるのがつらくて……それで、痩せようって決めたの。でも、ダイエットや栄養のことを勉強しているうちに、自分が今まで体に悪いものばかり食べていたってことを知って……。それからは楽しくなったかな。ダイエットっていうより、体質改善だね」  REIが振り向いた。  そこには、いま悲しい過去を告白したとは思えない、穏やかな笑みがあった。 「だからね、私、いじめをしてた人たちのことは全然恨んでないの。むしろ感謝してる。自分の健康について考えるきっかけをくれたから」  〝REIちゃん、えらい〟〝いじめをする人って許せないな〟——REIを擁護するコメントが次々と流れていく。でも私は途中から、その文字が目が入らなくなっていた。  彼女の向こうにある無数の蝋燭。それらに照らされて光る、テーブルに並べられている物たちを、凝視していた。  そのどれもに見覚えがあったからだ。  舞香の、ペンギンのキャラクターが付いたシャーペン。  桃奈の、かわいい文房具屋さんで買ったというピンク色のカッター。  そして……家庭科の授業で使っていた、私の、布切りバサミ。  間違いない。あれらは小学校の頃、私たち三人が持っていた物だ。  ハサミ——失くしたんだと思ってた。  まさか、麗衣子が持っていたなんて。  
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