ナイト・ルーティン

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  「みなさんこんばんは! 今回の担当は私、コズエです。今日は私のナイトルーティンを紹介したいと思います。お肌に大切な夜のお手入れがたくさん出てくるから、みんなもぜひ真似してみてね」  再生ボタンを押すとやたらとハイテンションな自分の声が響いてきて、羞恥心に頭がぎゅっと痛くなった。  あぁ、馬鹿っぽい。痛々しい。やっぱり撮り直せばよかったかもしれない。前回の動画ではもっと落ち着いた雰囲気で話してたのに、これじゃキャラが違いすぎる。でも、撮影と編集に何時間もかけたあとだから撮り直す気力なんかなくて、そのままぼんやりと動画を眺めていた。  画面の左下、再生回数と書かれた文字の横には先ほどからずっと〝1〟という数字が浮かんでいる。私がいま再生するまでは0だった。公開して三十分は経ってるというのに、フォロワーたちは誰も動画を見てくれない。わかってる。彼らが私をフォローしたのは、フォロー返しを期待していただけ。告知が流れてきた時にいいねを押すだけの簡単なお仕事だ。彼らは私の動画に一ミリたりとも興味はない。 「(こずえ)、もう公開したのー?」  背後から上の空な声が飛んできた。  振り返らなくてもわかる。後ろのソファで寝転がっている彼女たちは、今、私の動画じゃなくて推しのアイドルの生配信を見ている。  それがわかっているからつい、乱暴に答えてしまう。 「さっき上げたって言ったでしょ! あんたら、ぼーっとしてないで少しは協力しなさいよ」 「はいはーい。ツイートしまーす」 「でもしたところで、うちらのフォロワー数じゃ……ねぇ」  はじめて動画を上げた時は、三人で興奮しながらパソコンの画面を見ていたというのに。女子大生の情熱なんて、真冬のバスルームより冷めるのが早い。  
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