『すれちがう心』

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 私はまた、書架に目をやり、百人一首の本を手にとった。 『人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は』  作者は後鳥羽院。世の中に思う不の葛藤や、人に対する情緒が揺れ動いてる感情が込められ、それに対する己の無力さを強く感じてしまう歌である。  春香をそれに当て嵌め、私に思う事…それは…それは、復讐という感情に変化してしまってるのではないだろうか…私が春香の幸福を奪った。私が春香の未来、運命を奪った。それでも春香は生きている。それは健介がまだ生命を絶っていないからなのか、それとも私に対する復讐心が故か…  友達が出来た事で、人生が少しは豊かになってくれていたら幸いだが、恐らくそう簡単にはいかないだろう。  ならば、私が出来る事はなんだろうか…
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