また、世界が交わるときに。

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 タイムスリップを話す時に、よく持ち出されるのが、『パラレルワールド』だ。この世の全てが直線上にある一つの過去、現在、未来があるという訳ではなく、平行世界上にいくつもの過去、現在、未来があるというもの。例えば今、俺が目の前にあるハーゲンダッツの抹茶味を食べるのか、それともビスケットサンドアイスを食べるかの選択で、世界線が二分する、という訳だ。そしてその世界はどんどん枝分かれし、未来にかけて細分化されていく。俺は結局、ハーゲンダッツの抹茶味の世界を選んだ。  外では蝉がよく鳴いている。耳から聞こえる夏らしさが、気から俺の体温を上げていくような気がする。しかしそれを、部屋のクーラーとハーゲンダッツで下げていく事で一息つける気がしている。正直、生きているだけで地球に殺されそうなほどに暑い夏は、あまり好きにはなれない。汗ばんだ肌Tシャツが張り付く感覚はとても気持ちが悪い。  ある誰かは、同じ世界線、つまり現在という時間軸が複数あるなんて考えられない、あり得ない。と言うが、俺はパラレルワールドを信じている方だ。それにはちゃんとした理由がある。俺の子供の頃の友達は、その並行世界の住人だった。もしも並行世界が実在するのならば、それはきっと俺も同じなのだけれど。その友達は、俺が小学生の時に自殺してしまった。まあ、もう遠い昔の話だけど。あ、ちょうどいいや。そのまま俺の不思議な話、聞いてってよ。
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