第1話 プロローグ

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第1話 プロローグ

 映画館で映画をみるのが好きだ。  ネット配信でなんでもみることができる時代に映画館なんてオワコンだという人たち。そんな人たちに、そんなことはないと議論をぶっかける勇気はあたしにはない。  そうですか、すみません、すみません、映画館好きですみません、と頭をさげながら、本当になくなってしまうまで通い続けるだろう。  すてきな映画を見終わったあと、掃除の人が来るまで、一人で、空っぽになったシートに囲まれて、なにも映っていないスクリーンを眺める数秒が好き。  あつい夏の日差しが待つことを知りながら外へ出て、やっぱりあついなと思うのが好き。  すこし暗い屋内から外へ出て、目をほそめながら世界の明るさを知るのが好き。  もくもくと立ちのぼる入道雲の下で、ときどき見かけるあの人が、おなじように目を細めていることを横目でみるのが好き。  話したこともない、あの人が、好き。  だれかのために遠慮がちに生きている、優しいうしろすがたが、好きだ。
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