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第2話 終わりの夏
それはあたしの17回目の夏。
もう二度と来ない夏、消えてしまった夏。でも、どこへ? 青空に立ちあがった巨人のような雲と一緒に、夏はどこへいってしまうのだろう。
あたしは、映画館で映画をみるのが好き。『雨に唄えば』をみて嬉しそうにしているレオンくらいには好き。
でも、夏と一緒に映画館もいってしまう。併設のショッピングセンターが撤退するから。あたしの望みなど歯牙にもかけず、わが町最後の映画館が秋にはなくなってしまう。
あたしの17回目の夏休みは、町に映画館がある最後の夏休み。といって、別に映画館を気のいいおじいちゃんがやっていて、気さくに声をかけられていたとか、映画館がなくならないように何かしようとか、そんなアオハルをてらうこともない。
あたしは、ただ、いつものように映画をみて家へ帰り、あつい季節と一緒に出てくる夏野菜のカレーを、もさもさと口へ運ぶだろう。
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