くろすおーばー～こーじーの世界へようこそ

タイムスリップ！ 綱くん！

「へえ、なんか、いい匂い……うわ、柔らか……うま！」

　薬師が使うような銀の匙が、何の抵抗もなく沈み、けれど持ち上げたら形があって。

　恐々口にいれると、あっという間に溶けてなくなり。

　そして、ものすごく甘くて、とろっとした後味が残る。

　底の方に少し苦い汁が入っているけど、混ぜたら香ばしくて結構イケる。

「……甘さ控えめだけど、これ、いいな」

「うん、これはうまいや。和矢好みだね」

　なかなかの好評に、美矢は内心にんまりする。

　コクを出すため無糖練乳(エバミルク)を使った蒸しプリンは、なかなかいいアイデアだった。

　甘いものが苦手な恋人のために、日々切磋琢磨して研究を重ねていた成果である。

　もちろん、俊の分は取ってある。

　綱は夢中で平らげて、カップの縁についたカスまで名残惜しそうに匙でこすって食べていた。

　美矢は苦笑して、もう一つお代わりを持ってきた。和矢の無言の圧力は、今度は無視して。