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とりあえず一番近い遠野家(と説明された)に運び込まれた綱は、すぐに目を覚ました。
傷を見るからと水干を脱がされ、単衣ももろ肌脱いだ状態の綱に、和矢は優しく微笑みかける。
これだけは、と烏帽子は死守した(出会ったばかりの人前で外すのは裸より恥ずかしいこと!)。
斎の診立てでは軽い打撲だと言うこと。
肩を診てもらっている間にポツリポツリと自分のことを話した。
薬が来るまでと柔らかい布でくるまれたツルツルテラテラした袋に入った水の塊(?)で冷やしてもらって、実はもう、痛みはだいぶ治まっていた。
けれど、優しい頼光さま……ではなく、和矢に労わってもらうのが嬉しくて、言わないでいた。
「でも、僕って、そんなに源頼光に似ているんだ?」
「……そっくりだ。頼光さまより、色が黒いけど、あと、髪も短いけど」
烏帽子を外した姿は、近習の綱や限られた人間しか見たことはないが、頼光さまは見事な黒髪を背中まで伸ばし、いつもはきちんと結っている。
それに比べたら、残念ながら和矢は(斎もそうだけど)、ボサボサの浮浪児のような髪形をしている。せっかく見目麗しいのに、もったいない。
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