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ハッと気づいて、綱は思わず肩にかけてもらっていた掛物(ばすたおる、とかいう、とても柔らかい布だ)の前をかき合わせる。
「美矢、一応男の子が裸なんだから、気を遣いなよ」
「あ、ごめんなさい。ええと、綱、くん? ほんとにごめんね」
和矢そっくりの、つまりは頼光さまそっくりの、でも女性の美矢を前にして、綱は今まで以上に顔を赤くして。
「だ、だいじょうぶ、です」
美矢が綱の左肩に「シップ」と言う布を貼ってくれる。どうやら薬草を練りこんであるらしい。便利だな。
ひんやりした感触に一瞬びくりとしたが、気持ちよい。
すん、と清涼感のあるにおいに、綱の鼻が反応した。
「……目草のにおいがする」
「へえ、やっぱり『本草和名』の通りなんだ」
メントールのにおいのことだと検討をつけて、斎が嬉しそう一人で納得している。
「? 目にいいからって、頼光さまがたまに市で買って、ごちそうしてくれるよ」
「ああ、日本薄荷は最初は薬草じゃなくて、山菜として食されていたそうだからね」
ふむふむとうなづく斎が良く分からないが、とりあえず痛みはさらに楽になった。
「目草って、傷薬になるんだな。帰ったら、頼光さまに教えよう」
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