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「わぁ。綺麗!ねぇ、健人見てー」
結婚式場での打ち合わせの帰り道、駅への道すがら横を歩いていた遥香が歓声を上げた。
先ほどまでの激しい夕立が嘘のように空は澄んで晴れ渡り、頭上には大きな虹が架かっていた。
「おぉ、ホントだ。すっげぇな」
久しぶりに見た虹は、子供の頃、見たものよりもずっと大きく、思わず声が出た。
「雨上がりに太陽を背にして空を見上げると、虹が見えるのよ」
夕立の最中に鳴っていた雷に怖気づいていたのも忘れ、遥香は得意気に胸を反らし、ウェーブのかかった茶色い髪をかき上げる。
それから、他愛もない話をしながら信号待ちをしていると、
「危ない!」
通行人がこちらに向かって叫んでいる。
見ると、蛇行運転のダンプがこちらに向かって突っ込んで来ていた。
このままでは2人とも轢かれる!
思ったが、恐怖に足が竦んだ俺は全く動くことができず、その場に立ち尽くしてしまった。
スピードを緩めることなく突っ込んできたダンプに衝突した俺と遥香は、強い衝撃に襲われ弾き飛ばされた。
まともに地面に叩きつけられ、全身に激しい痛みが走り、息が出来ない。
離れた場所で頭から血を流し、眼を見開いたまま仰向けで倒れている遥香が見え、絶望感にさいなまれたところで意識がなくなった。
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