一夜の過ち

4/22

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
クロエと名乗るカメラマンの耳は、ルーズリーフの穴の様にピアスが並び、下唇の中央にはシルバーのピアスのボールが光っていた。 「だーいじょうぶ。 クロエちゃん見た目はこんなだけど、怖くもないし、悪い人でもないよ。 お姉さんが保証する」 モデルの女性はそう言いながら俺に近寄り、熱い視線を向ける。 「不躾に見るなよ、あずさ」 「だってリキくん、肌は陶器みたいにツルツルピカピカだし、背もまぁまぁあるし。 それにこの硬派そうなキリっとした、端正な顔立ち。近くで見たくもなっちゃうわよ」 背がまぁまぁある(・・・・・・)扱いをされるのは初めてだった。 179cmというのは、モデルからしたら決して長身ではないのだろう。 確かにあずさと呼ばれたこの女性は、ヒールの分を抜いても170cm以上は余裕でありそうだし、リキくんという男性も明らかに俺よりも背が高い。 カメラマンのクロエさんだけは小柄だけれど、小顔のせいなのか、遠目で見たときには小柄には見えなかった。 「本当にきれいな肌。お手入れとか、どうしてるの?」 あずささんは更に近寄り、頬に手をのばした。 「あずちゃん。触るの、禁止」 クロエさんが呟くように言った。 「なんでよぅ。嫉妬? いいね、BL大好き」 あずささんが調子よく返し、リキさんも笑う。 どんな顔をしていたら良いだろうと思いながら、とりあえず笑ってみると、クロエさんが口を開いた。 「BLじゃないよ、女の子だし」
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加