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「被写体っていっても、無理やり裸の写真撮らせろとか、そういう事はしない。
同意のないセックスするような性癖もないから、それもない」
裸、セックス、性癖。
クロエさんがさらりと口にするその言葉にいやらしさは微塵もなく、無機質だった。
「手を出すのが目的なら、酔ってるうちにもう出してる」
眉一つ動かさずに、ただ機械的に言われた。
「じゃあ……人肌恋しくなったときの、よろしくっていうのは」
「抱かせてくれればいい」
「抱かせるって……」
「セックスって意味じゃなくて、ハグの方」
一瞬だけ、クロエさんは自嘲するような、哀しい微かな笑みを浮かべ、すぐにそれを消した。
その顔はハグという言葉とは、とてもアンバランスだった。
クロエさんは短くなった煙草を消し、また煙草を出して火を着ける。
手持無沙汰にライターの蓋を開閉し、反響音を鳴らしながら「駅前とかで、たまに見ない?」と聞く。
「……なにを、ですか」
「フリーハグの人。
あれだと思ってみればいいんじゃない。
相手は不特定多数じゃなくてオレだけだし、バイト代も出る。
フリーじゃない、ハグ」
それはもうフリーハグの話とは関係ないんじゃないかと思っていると、クロエさんは開閉する手をぴたりと止め、俺に視線を移す。
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