二者の契約

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さっき窓から外を覗いだ時、外は暗かったけれど今は何時なんだろう。 キャリーケースを受け取った時、一緒にスマホも渡されたけど、時間も通知も何も確認せずに仕舞った。 こんなにスマホを触らない日は、今までにあっただろうか。 これまで何度も、これ以上、自分が傷つく前に茉莉香と距離を置こうと思ったし、そうするのに適したタイミングもあった。 違うクラスになった時、部活が忙しかった時、進学した時。 さりげなく、茉莉香に気付かれずに距離を置く事は出来た。 だけど、ずっと出来なかった。 周りからはいつも「茉莉香はアオイにべったりだね」と、言われてきた。 でも実際はそうじゃない。 俺の想いの方が遥かに重く、深く、べったりとこびり付いて、茉莉香から離れようとしなかった。 茉莉香は俺以外の友達がいないわけじゃない。 小動物みたいにちょこまか動いて、どちらかというと控えめで、押しに弱い。 でも俺が名前や見た目でからかわれている所を見ると、止めに入ってきた。 好きな人にバレンタインチョコを渡す勇気はなくても、そういう勇気は持っているような子。 俺がそばにいるから他の子は遠慮しているだけで、自分が少しでも離れたら、誰かにポジションを奪われるんじゃないのか。 あっという間に自分たちの繋がりはゼロになるんじゃないのか。 そう考えると、怖かった。 そうやってズルズルしてきて、結局、茉莉香に彼氏が出来てから理由をつけては会う回数を減らした。 そんな時でも、なんだかんだスマホは手放せなかった。 今日は茉莉香から連絡がくるか、こないか。 そう考えない日はなかった。 やっぱりどこかで繋がっていたかったのかもしれない。 どうせ会おうと誘われたって、断るくせに……。 スマホがない時代に生まれていたら、俺の茉莉香への執着の形も違っていたんだろうか。
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