二者の契約

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浴室に入り、シャワーを浴びようとすると、ハンドルが幾つも並んでいた。 どれがシャワーのハンドルかわからず、一通り試してみて、打たせ湯にオーバーヘッドシャワーまである事がわかった。 真上からシャワーを浴びると、自分の中にある汚れまで、すべてが流れていくような気がした。 一面真っ白で、無駄な物がない空間がそう錯覚させてくれたのかもしれない。 ガラス製のボトルはシンプルでスタイリッシュ過ぎて、どれがシャンプーで、どれがボディソープなのか、よくわからなかった。 どれもユニセックスで嫌みのない、シトラスの良い香りがする。 全身をよく洗い流すと、身体はすっきりと軽くなった。 使ったアメニティがちゃんと一直線に並んでいるか確認し、浴室を後にする。 大きな鏡で顔を確認すると、眼は少し腫れていた。 クロエさんに言われた薄いブルーのバスローブに身を包み、髪をタオルで乾かしていると、遠慮がちなノックが聞こえた。 慌てて返事をして扉を開けると、クロエさんがバスルームとは反対側に顔を向け、更にその顔を片手で覆っていた。 もう片方の手でバスローブと同じ薄いブルーのタオル地のスリッパを差し出す。 「ありがとうございます……。 もうバスローブを着ているし、支度も終わったので、こっちを見ても大丈夫です……」 そう言うと、クロエさんは顔を覆っていた手を外してこっちを向いた。 見ても大丈夫なんて言ったけれど、いざお風呂上がりの顔を見られると妙に恥ずかしい。 眼だって腫れている。 クロエさんはジっと見てきたと思うと、無言で鏡の前へ誘導した。
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