二者の契約

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―――やっぱり、よくわからない人。 階段を降りながらクロエさんの行動を振り返って、そう思った。 写真を撮りたいと言って、ジっと見つめてきたかと思えば、あんな風に挑発してきて。 こっちが泣けば慰めるみたいにしてくれて、髪も……優しく乾かして。 悪い人じゃないと思うけれど、得体の知れない人。 あまりしゃべらないし、表情もあまり変えない……。 茉莉香の事は、自分が酔っていた時にクロエさんに言ってしまったんだろうか。 誰にも言わずに、気付かれないように、ずっと上手くやってきたのに……。 俺は茉莉香が好き。 みんなが好きな人の話をするように、自分も誰かにそう言ってみたいと思った事もある。 だけど言ったりしたら、自分だけじゃなくて茉莉香にもきっと迷惑がかかる。 それに茉莉香は、きっと自分を責める。 「気付かなくて、ごめんね。 何も知らないで好きな人の相談をしたりして、アオイを傷付けてきた」 こんな風に、きっと謝ってくる。 「そんな目で見てたの?」 「気持ち悪い」 そんな事は、きっと茉莉香は言わないだろう。 俺を責めるよりも、自分を責めてしまう。 茉莉香は何も、悪くないのに。 茉莉香にまで重い物を背負わせたくない。 こんな辛くてドロドロなのは、自分だけで良い。 茉莉香だけは、綺麗なままでいて。 お酒なんか飲むんじゃなかった……。 なんでクロエさんに言ってしまったんだろう。
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