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鮮やかな、金と緑のグラデーションのマッシュヘア。
鎖骨までのびた襟足が揺れる。
女性なのか男性なのか、一瞬、迷う。
喉の膨らみが眼に入り、男性だとわかった。
奇抜な柄のシャツと、踝よりやや短い丈のワイドパンツをざっくりと着こなす姿は、妙な存在感がある。
とんでもないところに来てしまったのかもしれない。
「起きたんだ。おはよう」
「お、おはようございます……」
「よく眠れた?」
カメラマンは微笑むわけでもなく、ただ淡々と話す。
「あの、ここはどこですか……それに、俺はいったいどうしてここに?
もしかして昨夜、ご迷惑をお掛けしたんじゃ……ないでしょうか」
突然、モデルの女性が、端正な顔立ちに似合わず、ゲラゲラと笑い出した。
真っ白な空間に笑い声が反響する。
モデルの男性は「笑いすぎだよ」と注意するけれど、そう言っている本人も笑っていて説得力はまるでない。
呆気にとられていると、モデルの男性は目尻の涙を拭いながら口を開いた。
「ごめん、ごめん。つい、笑っちゃって。
君、覚えてないの? 昨日すごかったんだよ。
まぁ僕達は見ていたわけじゃなくて、全部クロエ……あ、このカメラマンね。
クロエから、話を聞いただけなんだけどね」
名指しされたカメラマンは右手を小さく挙げた。
「覚えてなさそうだから、もう一回自己紹介しておくと、オレは我妻 玄栄。
仕事はカメラマンとか色々やっていて、怪しい者ではない」
「くろえ……さん?」
「玄人のクロに、栄える、でクロエ」
珍しい、名前。
この人には、なんだかとても合っている気がする。
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