一夜の過ち

5/22

147人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
「うっそ。女の子だったの?! どうりで……。男にしたら綺麗過ぎると思った……」 「まぁ…男とか女とか、性別なんてどっちでも良いけど」 「相変わらずだなぁ、クロエさんは」 男性と間違われる事には、もう慣れていた。 別にそれで傷ついたりも、ショックを受けたりもしない。 むしろ、間違われない事に慣れていなかった。 「あの……。クロエ、さん…どうして俺が女だってわかったんですか?」 「見たらわかる。 昨日だって、女の子がこんな時間に一人で酔っ払うのは危ないから……って、声を掛けたし」 「そう…なんですね……」 「着替えてるところは見てないから。 バーから(うち)に運んで、服を渡して、ちょっと目を離したら自分で着替えてた」 クロエさんの話によると俺はバーで泥酔し、これから向かうはずだった住み込みのリゾートバイトをドタキャンされ、今からどうやって割の良いバイトを見つけたら良いんだと、グダグダくだを巻いていたらしい。 ………まったく記憶にない。 でも、ドタキャンされた事は事実だった。 この夏は、来年からの一人暮らしの資金作りをしようとしていた。 なのに出発当日、荷物を完璧に詰めたキャリーバッグを引いて現地に向かっている最中でのドタキャンの連絡。 ホテルでボヤ騒ぎが起きたとかで、とても営業出来る状態ではないから御免なさいね、と謝られてしまった。 このまま家に帰るのもなんだし、どこかで飲もうと決めたような気がする……。 「じゃあ、オレが代わりに雇うって言ったことは覚えてる?」
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加