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鏡に映る自分をあらためて見て絶句する。男の体には不釣り合いな可憐な服に身を包み、男のモノを咥え込ながら、自分のモノはリボンで縛られ射精を許されず憐れな汁に塗れている。
「この姿、他の奴らが見たらどんな顔をすると思う?」
意地の悪い囁きが寄越され、俺は思わず目をつむり首を横に振った。しかし、追い打ちを掛けるように圭人は続ける。
「物置部屋でのお父さんの顔を思い出してみて? あれが答えだよ」
目をつむったせいで、瞼の裏にあの時の父さんの表情が浮かび上がってしまう。自分の息子でなければもっと侮蔑をありありと浮かべただろうあの顔。
それを見た時の、見捨てられるのではないかという恐怖が鮮明に蘇って胸が震えた。
「気持ち悪い」
一瞬、瞼の裏に浮かぶ父さんの口が動いたのではないかと思うくらい、その表情にぴったりと重なる低く冷たい声が耳元で囁かれた。
思わずびくっ、と肩が跳ね上がる。その反応に圭人がクスクスと笑った。
「びっくりしすぎ。でも、みんなそう思うよ。尊のお父さんも、お母さんも、美優も、鈴井さんも……」
連ねられる人物が代わる代わる瞼の裏に浮かび上がり、あの時の父さんと同じ表情で俺を蔑む。
「い、いやだ……っ。やめろ……ッ」
「はは、そうだよなぁ。嫌だよなぁ。でも実際、誰もがそう思うよ」
圭人は残酷に笑いながら言い切ると、俺の目尻を濡らす涙を拭き取った。その手は、とてもひどいことを言っている当人とは思えないほど優しいものだった。
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