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「いやぁ、本当に今日はありがとうな」
「気にすんなって。それより無事引っ越しが終わってよかったな」
「本当だよ。あ~、これで今日から安眠できる~」
「あー、ここのところ寝不足で隈ができてたもんな。ところであの服はどうしたんだ? 捨てたのか?」
「いや、捨てようと思ったんだけど、あそこで捨てたらストーカー野郎にバレそうだし」
「ああ、ストーカーってごみチェックしてそうだもんな」
「そうそう。だからこっちに引っ越してから捨てようと思って」
「なるほどな。でも油断大敵だぞ。こういうのって気が緩んだ頃に……」
――ピンポーン
Bの言葉を遮るように玄関のチャイムが鳴った。
Bと顔を見合わせてゴクリと唾を飲む。
インターフォンで確認すると、そこには宅配便のお兄さんが立っていた。
そしてBが「あ!」と思い出したように声を上げた。
「そうだそうだ。引越祝いのプレゼントが届くようにこの時間に指定してたんだった。すっかり忘れてた」
Bの言葉にホッと安堵の息を漏らす。
「ふざけんな、びっくりするだろ。普通にもってこいよ」
「ごめんごめん、サプライズのつもりだったんだけど、タイミング的に洒落にならないサプライズだったな」
笑いながら二人で玄関に向かい、荷物を受け取る。
真っ白な段ボールに貼られている伝票の差出人はBのもので間違いなかった。
「あー、よかった。早速ストーカーに住所バレたのかと思ってめちゃくちゃ心臓バクバクした」
「ははは、びっくりさせてごめんな。でも中身はもっとびっくりするものだから開けてみ」
「マジで。悪いな、手伝ってもらった上にこんな気遣いまでしてもらって」
最近嫌なことしかなかったので自然、心が躍る。
部屋に戻ってから箱を開けると――
「……え」
そこにはあの日、A子以外の同僚の女子たちにあげた服が入っていた。
心臓が凍り付く恐怖を覚える。一瞬、何が起きているか理解できなかった。
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