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「びっくりした?」
隣に座るBがにっこりと笑顔で顔を覗き込んでくる。
心臓がバクバクと警鐘のように激しく脈打っている。
「え、いや、えっ、なんでこの服が……」
「取り返してやったよ。これで全部戻ってきたな。――俺がお前に贈った服」
あまりの展開に固まって動けずにいると、Bは箱から服を一枚取り出して押し当ててきた。
「うん、やっぱりこの服はお前が一番似合うな」
歪な笑みを深めてBが満足そうに言う。
「な、なんで……」
震える声でなんとか言葉を絞り出した。
「なんでって、当然だろう? 俺はお前に着て欲しくて贈ったのに、他の奴が着るなんて我慢できない」
「そ、そうじゃなくてっ、どうして、俺に服なんか……」
まだ悪趣味なイタズラだという可能性に縋るように問う。しかし返ってきたのは、どうしてそんな簡単なことも分からないのかというような嘲りだった。
「男が服を贈る意味なんて決まってるでしょ。――その服を脱がせたい、だよ」
その一言に目の前が真っ暗になった。
そのままBに床に押し倒されるが、恐怖で心も体もすくんで動けない。
Bはその様子に満悦の笑みを浮かべて頬を撫でてきた。
「服を捨てなかったのは正解だったよ。手放した服の数だけお仕置きをするつもりだから。俺だってさすがにあの枚数分のお仕置きは心が痛いよ」
眉をハの字にして笑ってそう言うと、おもむろに箱を持ち上げ、中身を上からぶちまけた。
自分の体の上に可憐な服たちがうずくまる。
「でも、この服の枚数分は、ちゃんとその体で償ってもらうよ――」
歪んだ口の端に浮かぶ荒々しい欲情の影に体の震えが止まらなかった。
―了―
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