可愛い可愛い、君への贈り物(ツイノベ版) 

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可愛い可愛い、君への贈り物(ツイノベ版) 

 毎週金曜日、残業を終えて帰ると、差出人不明の紙袋がドアノブにかかっている。  中身は決まって服だ。しかも女物の。  理由は大方見当がつく。ストーカーだ。 しかしもちろん自分のストーカーではない。恐らく少し前まで、同棲中の彼と大ゲンカしてしばらくうちに住み込んでいた妹のストーカーだろう。  身内の贔屓目なしに妹は可愛い顔をしている。テレビのアイドルたちにも引けを取らないくらいだ。自分とは全く似ていない。  初対面で二人が兄妹だと気づく人はいないし、兄妹だと明かしてもしばらくは信じられずにいる。  たびたびアイドルやモデルなどのスカウトを受けるが「自由に恋ができないのが面倒なので結構です」と言ってそれら全てを断ってきた。  性格は多少アクが強いが、見た目は誰もが認める完璧な美少女のため、これまで数々の男たちが妹に好意を寄せてきた。その中には、当然気味の悪いストーカーも少なくなかった。  恐らく今回も妹に一目惚れしたストーカーが、まだ妹がここに住んでいると思い込んで、こうしてせっせと愛のプレゼントを贈り続けているのだろう。  一応、ベランダに自分の男物の下着を干したり、玄関のネームプレートにどう見ても女の物には見えない自分の名前を貼り出したりしたが、効果はなかった。  下着はベランダの床に打ち捨てられていたし、ネームプレートは毎回回収されてしまった。  恐らく愛しの彼女の周りに男の気配があることが耐えられなかったのだろう。  贈り物の服は全て新品で、しかも高いブランドものばかり(妹が教えてくれた)。  そして服と一緒に添えられているのが手紙と一冊の雑誌。  雑誌はデートスポットのページに付箋が貼られていて、手紙にはそこへ贈った服をきた妹とどういうデートをしたいかをいう妄想が書き連ねられている。  気持ち悪くないと言えば嘘になるが、歴代の猛者たちの贈り物――精液付きのタオル、盗聴器が仕込まれたぬいぐるみ等々、に比べれば、まぁ可愛いものだ。  だから警察には通報していない。
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