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「そういえば、岩瀬ってイマ、彼女いるんだっけ?」
桃とリンゴのサンデーが来るまでのツナギであるかのようにそんな質問をしてきた。
「いや、イマはいない」
「大学四年の夏にフリーなのね、学生最後の夏なのに」
「……イマは就活忙しいし」
「あ、岩瀬ってまだ内定ゼロなのね」
遠藤は、どこぞの商社の総務に内定を獲ったと四月の終わりに聞いた。
「内定さっさと取って、彼女つくればいいんだよ」
「さっさと取れるならね。ていうか、そんな都合よく彼女はできないだろ」
「いやいや岩瀬はなかなかの好物件だよ。私が保証する」
あの頃と同じような笑顔で遠藤は言った。あの頃、つけまつげはなかったはずだけど。
「高校ん時は気づかなかったけど、背ぇ高いし、すらっとしてるし、顔もそれなりで、女子の話をちゃんと聞いてくれる、気も利いて優しい。これって悪い物件じゃないよね?」
後半の「女子の話」は「遠藤の話」に置き換えておくべきなのだけど、僕は黙っておいた。
誰の話でもこうして聞いてるわけじゃない、と思いつつ自分は昔からそういうポジションのような気もしてきた。
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