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彼女の元を去ってからの日々は辛かった。
空腹にも耐え、劣悪な環境にも耐えた。
でも、それに耐えられたのは、頭の中にはずっと彼女の笑顔があったから。
いつか彼女と再会して、成長したボクの姿を見せられる時が必ず来る…。
それだけがモチベーションだった。
そしてようやく7年が経った。
1週間ほど前、ボクは再びこの地に帰ってきたところ。
彼女はこの場所から引越ししていないのは間違いない。
でも、まだ彼女に会えていない。
早く会いたいな。
ボクのこと覚えてるかな?
覚えてないかな?
成長したボクは、もうあの頃のようにちっぽけでひ弱なボクじゃない。
ぱっと見は分かんないかもしれない。
でもボクの声を聞けば、彼女なら…。
既に彼女は、いわゆる“JK”になっているはず。
それもあってか、最近遊んでばかりで中々家に帰ってこないことが増えたらしい。
「もう、“しぐれ”ったら、また夜遊びして…。お父さんからも注意してやってくださいな」
「うーん。そうだなあ」
窓が開け放たれたリビングの中の様子を伺っていた僕の耳に、彼女のお母さんとお父さんの声が聞こえた。
彼女は“しぐれ”ちゃんっていうのか。
恥ずかしながら、名前は今初めて知った。
覚えておこう。
結局その日も、ボクが起きている間には彼女は帰ってこなかった。
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