初恋の思い出

6/12
前へ
/12ページ
次へ
「買い物?」 「…母親に頼まれて」   そう答えて、なんてダサい回答だろうかと思う。 「ふふ、意外といい子なんだね」   彼女はおかしそうに笑う。 俺は恥ずかしくて目をそらした。   それから、ふたりして雨が止むのを待ちながら他愛もない話をした。 夏休みの課題の進み具合だとか、先週放送された夏の特番が去年よりおもしろくなかったとか、夏祭りが楽しみだとかそんなつまらない話だ。 つまらないけど、彼女とこんなに長く話をしたのは初めてで、少し嬉しかった。 クラスメートだけど、普段関わることはなく、4月以降、言葉を交わした回数も片手で足りる程度だったから。 (雨が、止まなければいいのに)
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加