初恋の思い出

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夏祭りの話題が出た時、俺はどきっとした。 彼女はどんな格好で行くのだろう。 浴衣を着るのだろうか。 浴衣姿も似合いそうだが、どんなものを着るんだろうか。 __彼女は、誰と祭りに行くんだろうか。   訊くのは簡単だ。 「彼氏と行くの?」たったそれだけの言葉が、苦しくて声にならない。   そうだ、と言われたら、多分立ち直れない。 訊かなければ、悶々とするだけなのに、俺には勇気がなかった。   18年間の人生、今まで女の子をかわいいと思ったことも、好きだと思ったこともそれなりにある。 だけど、これほどまでに恋い焦がれたのははじめてだった。 たぶん、これが俺の初恋だったのだ。   たいした接点もないし、きっかけも正直覚えていない。 気がついたら彼女を目で追っていた。 彼女への思いを、友達にも気軽に口にできなかった。
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