初恋の思い出

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「吉田くんは、大学どこに行くの?」   ふと彼女がそう聞いてきた。 俺はぶっきらぼうに志望する大学名を言った。 「すごいね、難関校じゃない」   吉田くん頭いいもんね、と彼女が褒めるのを、俺はなんともない顔をして聞いていた。 心の中ではすごくにやけていた。 「わたしはね、東京の大学に行くつもりなんだ」   知ってる。 俺は彼女がどこを志望するのか、友達と話していたのを聞いていた。   平静を装って「そうなんだ」と相槌を打った。 「離れちゃうね」   え、と俺の口から声が漏れる。 今のは聞き間違いだろうか。 言葉の真意が知りたくて、俺が訊こうとしたその時。
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