鈍色の向こう

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「バカなの?理由なく仲良いのが幼なじみなの!」 「すごい暴論・・・でも賢い」 「あと、今までもだけど、これからも。な」 「イケメン」 「てか航平、お前こんなに面白いのに他の奴らは知らないなんてホントもったいねー」 ケラケラ笑う遼太と遼太の顔を照らす夕陽が眩しくて僕は目を細めた。 「あのさ、あの雨雲が自分みたいに見えたんだ。で、雨雲の向こうの晴れ間が遼太みたいに眩しくて、だからそれを1番近くで感じたくて、それで雨が止む前に外に出て遼太を待ちたかったんだよ」 意味がわからないと思う。 理由になってない事もわかってる。 自分でも何を言ってるのかよくわからない。 だけど、なんとなくそれが重要な事のように感じて、言っておかなければいけない事のように感じて、僕は呆れられるのを覚悟で口にした。 遼太は一瞬歩くのを止めて僕の目を見た。 「なるほどね」 そう言って再び歩き出した。 「あのさぁ航平、あとでノート写させてもらいに行くわ。お前着替えとけよ、風邪ひくから。あと鍵はかけろ、チャイム鳴らすから」 「・・・お母さんか」 「ちげーよっ」 「あははっ!じゃーあとで」 「あとでな!」と言う遼太の背中を見送って僕は家に入った。 fin
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