鈍色の向こう

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窓の外。 橙の夕陽の反対側に、今にも降ってきそうな重たい雲が迫っていた。 「窓枠外したら空が広いんだろうね」 「は?」 「あ、いや。えーっと、窓を開けて外を見たら、空が広いんだろうね」 僕はそう言い換えて、振り返って友人を見た。 遼太(りょうた)は忙しげにスマホの画面をタップしていて「ッしゃっ!」と顔を上げるところだった。 「最近レベル上げつれー」 「・・・課金は、」 「しねぇよ」 寝る間も惜しんでスマホゲームする割に、そういうところは真面目だ。 授業中、寝てるくせに。 「あのさ遼太、ノート写すんじゃなかったっけ」 「・・・忘れてねぇよ?ぅわっ!?ってか窓の外やばくね?雲っ。絶対降ってくるじゃん。早く帰ろーぜ」 「んーー?」 「えっ?何?いや俺、傘持ってないから降る前に帰りたいんだけど」 「僕も持ってないよ」 今朝のニュースでは降水確率10%だったから。 朝は雲ひとつない青空だったし。 昼に教室から見た時も入道雲が見えていて真夏の空だった。 放課後、帰り際に遼太に「悪ぃノート写させて」って呼び止められて2人で教室に残っていて、3行くらい写したところで遼太にLINEが来て、それに返信していたと思ったら、気づいたらノートも写さずにゲームを始めてた。
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