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 緊張感を湛えつつも、尭司の胃袋への配慮を忘れない亜夜果の、ちょっと天然なところも、やっぱり大好きだ。  そのまま押し倒してしまいたい衝動を押し込めて。 「ありがとう。嬉しい」  今まで通り接してくれるのが、接しようとしてくれるのが、とてもありがたい。  そんな気持ちで、何とか笑顔を作る。  あれほど自制しようと決意してきたのだ。ここで堪えなくてどうする?!  尭司は無理やり思考を室内へ飛ばす。  鼻腔に届く、香ばしさと甘さの混じった匂い。  とたんに、腹が音を立てて空腹感を訴える。  何とか食欲に意識を回すことができた。  甲斐甲斐しくテーブルセッティングをする亜夜果を手伝う。    手際のよく盛り付ける亜夜果の仕草に見惚れながら、結婚したらこんな風に毎日が送れるのかもしれないと夢想する。
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