1/4
前へ
/224ページ
次へ

 ピタ、ピタ、ピタ……。  どこからか、聞こえる、音。  ピタッ、ピシャ、ピタッ……。  耳を澄ますと、そこに混じる水音も聞こえる。  それがどうやら足音らしいと気付き……亜夜果(あやか)は、目を覚ました。  まただ……。  また、いつもの夢だ。  いえ、前よりも鮮明に聞こえる。  また、近くなった。  夜毎、確実に近付いている。  少なくとも昨日は「足音」だなんて認識は持たなかった。  それに、あの音がどうして足音だなんて分かったのか、理由は分からない。  少なくとも、普通の足音ではない。  まるで、水底から這い上がって来るような……!  そこまで考えて、亜夜果は、背筋がぞわっとした。  決して触れてはいけない事実に触れてしまったような、理由のない恐怖。  思い出してはいけない、封印された記憶。  
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加