父さんとプラネタリウム

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「それでは北の空、高いところをみてみましょう。強いかがやきの星が、いち、にい、さん、しい、ご、ろく、なな。七つ並んでいますね。これは『北斗七星』といって、お水をすくうヒシャクのかたちをしていますよ。これでちいさな星たちをすくいあげて、パッとお空にまくのでしょうか。  もう少しさがって、大きくみてみましょう。ちょうどヒシャクのあたりがしっぽだと思ってください。あら、なにかの動物がかくれていませんか? 線でつなぐと、ほうら。大きなクマさんがでてきましたね。これは『おおぐま座』といいます。アメリカの伝説によると、森の中を散歩していたクマがおしゃべりする不思議な木につかまってしまい、お空に向かって投げられてそのまま星座になってしまったとか。しっぽを持ってブーンといきおいよく投げられたせいで、しっぽがながあく伸びてしまったそうですよ。おかしいですね。」  ああ、そういえばこういう話だったっけ。プラネタリウムで久しぶりに聞く星座の説明に、遠い記憶がぼんやりとよみがえる。おおぐま座の話が面白いのか、となりからは健太のくすくす笑いが聞こえてくる。私は目の端に懐かしい家族の存在を感じながらあたたかい気持ちで、眼前いっぱいに広がる満天の星空をながめるのだった。
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