父さんとプラネタリウム

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「ねえねえパパ、あの丸い銀色のがそうなの?」 「そうだよ、もう着くね。ママは寝ちゃってるなあ」 「やったーっ! 早く見たいなあプラネタリウム」  はしゃぐ健太を横目に自分も笑顔になりつつ、前方に見えてきた科学館に向かって車を走らせる。ここのプラネタリウムは科学館に併設されており、その銀色に輝く丸いドームがランドマークとなり少し離れた場所からでもずいぶん目立って見える。五歳になる健太にとっては今日が初めてだが自分は小学五年の時父さんと来て以来だから、かれこれ二十四年ぶりか。その間に建物はリニューアルされ新しくなっている。日進月歩の科学の世界、中の展示も当時と比べてずいぶん変わっていることだろう。  仕事が忙しく(少なくとも子どもの時はそう信じていた)休みの日もあまり家にいなかった父と、しかも二人だけで出かけるなんて滅多にないことだったから、あの日のことははっきりと記憶に残っている。  日曜の朝。父さんと自分は地下鉄に乗って科学館のある駅まで行き、そこから歩いて館内に入った。五階建てでフロアごとにジャンル分けされた展示があり、白い砂の入った振り子をゆらすと幾何学模様の砂絵が黒い下地の上に現れる台、地震の揺れを体験できる部屋、だんだんヘルツを上げていきどこまで聞こえるか試す装置など、理科の実験好きだった自分にとってはどれも興味深くおもしろい物ばかり。
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