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出口のない迷路
「出口にだけは油は撒いてないから、見つければ逃げられる。」
「……」
「運良く斧を持ってるみたいだし、一直線になぎ倒して行けばいい。」
「そうね。」
この男の目的は絶対そんな事じゃない。だってそれじゃ面白くないから。この男は私が斧を持ってるのも解ってた。なのに、一緒に迷路に入ると言ってきた。
「出口に何があるの?」
「この迷路に火がついて逃げられるのは、入口か出口だけ。君を助けに来るなるどちらかから。」
「……そうなるわね。水を少しかけただけで消えるような火じゃないもの。」
「俺は君に手紙で何を贈ったか覚えてる?」
「…っ!?」
「フリナの花弁だ。」
『俺はフリナを持っている』そう言いたいんだと思ってた。そう、それに気が付けって事よ。…セドリックを殺そうとしていた凶器は刃物でも銃でも何でもない…フリナよ…。
「出口に植えてきたし、置いてもきた。必死にエリザベスを探そうと迷路に入ろうとしてきたなら、確実に何処かに触れる。」
「………」
「アイツには死んでもらう。」
入口の方が近い!
そう思ったけど諦めた。
私とトビーとの間に油を撒かれ、そこに火をつけられたから。
トビーだけは入口から逃げられる。
「エリザベスだけが焼け死ぬのか、セドリックだけが腐るのか、2人とも死ぬのか、楽しみにしてるよ。」
そう言ってトビーは迷路から出ていった。
…やっぱり最初から私が目的じゃないわね。『僕の愛するセドリック』だった!恋文なら本人に渡しなさい!
そんなのはどうでもいいわっ!!
早く出口に向かわないと!!たぶんセドリックが1番最初に突っ込んで来ようとする。
……自分で言ったのに理解していなかった。
『毒を愛する者』から『毒草オタク』に持ちかけてる勝負なのに、それを使わない訳がない。
ここでセドリックか私、どちらが死んでもトビーは嬉しいのよ。憎しみだって愛だって執念だから。
セドリックには真正面から突っ込んでも護衛されて絶対に手を出せない。
餌よ。『僕の愛するエリザベス』は。
本当に愛するセドリックには、身体的に目に見えて変わっていく肉体に恐怖して苦しんでほしかった。その顔が見たかったのよ。
トビー様は自分でも自分の気持ちがわかりません。ってね。
運がいいのか悪いのか、私の体系は女の子っぽくないの。どちらかというと細くて平坦よ。だから迷路で迷った時に地面と木の隙間をすすんで出られた。迷路の外周まではほふく前進よ!
この状況で、追いかけっこでもないのに斧を使って突っ切る訳ないじゃない。
それに、煙りは上にのぼるのよ。下を見ない馬鹿はいないわ。
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