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出口に向かっても、煙で迷路の側を通るのは難しい。どうしても大回りになってしまう。
ドサっと音がした気がする。出口の方だ。リズが出てきたのかもしれない!!
「…っ!?」
出口付近で倒れているリズとナイフを持って笑っているトビーが見えた。
「っトビー止めろっ!!」
「……」
トビーの顔に血がついている。それが誰の血なのか判断出来ない。リズは頭と口を布でおおってる。そこに血が滲んでいるが大量には見えない。
「止めない。エリザベスはおまえのものじゃない。」
「そっくりそのまま返してやる。エリザベスは誰のものでもない!」
「そうだとしたなら、俺が心を奪う。」
「っ止めろ!止めてくれっ!!」
「そこで見てればいい。」
この男がリズに執着するのは俺のせいでもあるし、リズの事が好きだからでもある。
トビーは怖かった。子供の時から。
けど友達だと思ってたし、酷い事もされたけど助けてくれる事もあった。
1人でいるのが寂しかった時には一緒にいてくれたりもした。
けど、
もう駄目だ。
狂ってる…。
善悪の区別が普通と違う。
一体どれだけの命を奪ってきたんだろう。それも残酷な方法で。
人は変われるというけれど、根本的な部分は変われない。
何かを殺して生きていくのが喜びとしか感じられなくなっているなら、これ以上殺さないようにする。
「…大切な者を護る為なら何でも…する」
パンパンパンパンッ
護身用に持たされていた銃で、俺はトビーを撃った。
「…っ」
トビーの腹に何発か当たったと思う。トビーの腹が赤く染まるのがわかったから。
ドサっとトビーが倒れた。けど、今の俺にはエリザベスが1番だった。
「エリザベス!!起きろ!!」
頬に傷はあるけど、他に血が出ていたり火傷をしている所はない。
「…ん……」
「エリザベスっ!!」
「…ほんも…の…だ……」
ぼんやり目を覚ましたエリザベスは、またすぐに気を失った。
「サーシャ!ルネ!エリザベスを医務室へ運ぶ、手をかせ!!っラッドはすぐに医師を呼べ!他は消火にあたれ!温室と裏庭に火がまわる前に鎮火させろっ!!」
俺の指示通り、皆散っていった。
エリザベスをサーシャが抱え、ルネがその横で泣きながらついていく。
「先に行っててくれ。」
「はいっ!!」
トビーに撃った銃弾はいくつ当たっただろう。4発撃った、そんなに撃たなくてもよかったのに。
エリザベスが好きだ。
だから、何より護りたい。
これは絶対だ。
俺は卑怯だと思う。
トビーの事は誰かが何とかするんじゃないかって、心の何処かで思ってたんだ。
トビー…俺がお前を殺す日が来るなんて、思ってなかった。
俺にとってトビーはトビーだったんだから。
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