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目が覚めるとセドリックとルネと医師のタイタン先生がいた。 「あれ?トビーは?」 「…うん、捕まった。今は気にするな。」 「そう…」 気にするな…。 そう言ってるセドリック本人は真っ青だし、何かあったようにしか思えない 「エリザベス様」 「ん?」 「ハンカチを顔に巻いていた事と地面をはっていたようなので、あまり煙は吸っていません。頭にブラウスの袖を巻き付けていたので、顔の傷だけで火傷もありません。ですが、1週間は安静にして下さい。」 「はい…。」 タイタン先生は私をいつも診てくれる主治医。いつもは優しいのに今日は怖いわ…。 「灰を吸い込めば、それで死ぬ事も多々あるのですから、これからは無茶はしない事。」 「はい…。ごめんなさい。」 「よろしい。」 「ところで先生は何故ここに…?」 「侯爵のお願いでね。」 「お父様の?」 泣きはらした顔のルネは、まゆ毛をつり上げて私を怒った。 「トビーから手紙が届いた日の翌日すぐに旦那様に頼みました。」 「…それは、お父様もトビーの事を知っているの?」 「勿論です。邸に帰すか迷いましたが、学校に残すと苦渋の決断をなされたんです!!」 「…ルネ……裏切ったわね……。」 「私はお嬢様の為なら何でもするのです。それに、毒草接触を禁止する権限も頂きました。」 「…鬼がいるわ。」 「エリザベス様、絶対安静ですよ。ルネ、少し話したい事があるので外へ出ましょうか。」 「はい。」 2人が部屋から出ていくと、残ったのは私とセドリックだけ。 「ごめんなさい。謝るので許してください。」 絶対にメチャクチャ怒られるっ! ……あれ?なんかいつもと感じが…違う…。 「どうかしたの?」 「……俺は…トビーを殺した。」 「…セドリックが?」 「ああ。」 だから真っ青なのね。 捕まえるだけじゃなくて、勝負の終わりは私かトビーのどちらかの死じゃないかって予想はしてた。けれど、その時トビーを殺すのは私だと思ってた。 「……」 「……」 私の手を握るセドリックの手は冷たい。 辛いだろうけど、王太子は簡単に泣き顔なんて見せられない。 緩く握られた手をギュッと強く握り返した。 「……」 「泣いてもいいと思うわ。」 「…っ」 「生きていれば、自分にとって都合のいい事だけ起こるわけじゃない。悲しい事の方が多いわけでもない。けど、後悔した思いだけは消えないから増えていくように感じるけどね。」 私は目を閉じている。 セドリックから声は聞こえてこない。 でも握った手が軽く震えているのは、泣いてるからだと思う。
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