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都合のいい話
事件から4日
「1週間は安静にするけど、少しくらいお庭に行ってもいいじゃない。」
「駄目です。」
ルネと押し問答してると、セドリックが帰って来た。
…お母さんが帰って来てしまったから、もうお庭は無理だわ。
「今日は何か面白い事はありましたか?」
「ない。」
「…無くても、何か面白いネタを掴んできてくれるのが学校に通うものの務めよ。」
「…何だその務めは。」
「何かある?」
「はぁ…、ルーシーとスタンが喧嘩して別れていた。」
「ホントっ!?凄い情報を持ってるじゃないの!」
これでやっと婚約者候補が3人!
ルーシー
リリー
エリザベス
入学当初からこうあるべきだったのよっ!!
「リリーが兄と交際していた。」
「いきなり1人脱落っ!!相手は第2王位継承権保持者…。」
私では反対できない!
「まぁ、リリーみたいな子が好きだとは思ってたけどね。」
自分が腹黒だから、リリーのような可愛いタイプが好きなのよ。
ルーシー復活で喜んでいたら、リリー脱落…。
「兄上とリリーを見ていて辛くないか?」
「婚約者候補が減ってしまったから辛くはあるわね。けど、ルーシー様が復活してくれた訳だし…」
「…そうじゃなくて。」
「…?私は(腹黒)ロビン様に恋愛感情などないわよ。気を使ってくれてるようだけど。前に言った気がするわ。」
「そうなのか?」
「ええ。ロビン様と付き合っても1時間もせず別れる自信があります。」
「どんな自信だ…。」
私は腹黒くは無いけど、『やられたらやり返す。』『邪魔なものは排除する。』という精神の持ち主。それはロビン様も。
違いは、私は皆に気がつかれる方法をとってしまうけれど、ロビン様は罠をはって確実に仕留めるタイプ。
あの人、怖いっ…!
…トビーも、ロビン様のようにやろうと思えばいくらでも出来たんじゃないかと思う。私を捕まえるくらい簡単だったと思う。それに、私が迷路から出た時に連れ去る事も出来たし殺す事も出来た。
私との勝負。わざと足跡を残してた気がする。
セドリックに撃たれるとしても、それでいいと思っていたのかもしれない。
今、残酷な情報が飛び交っている。
それはトビーのやった事だとすぐにわかった。
男が2人殺されていた。その手口は驚くほど緻密で残酷…。被害者はどこの誰なのかさえ解らないほどの有様…。その記事を読んでいてセドリックが私を必死に止めていた訳がわかった。
セドリックが読むような難しい新聞にさえ載っていた。『ゴロツキが街で刺されて死にました』…そんな記事は載せなくても、今回の殺人については載せてた。
トビーの存在すら皆知らないのだから、事件は迷宮入りになる。
結局トビーは何が欲しかったんだろう…。
今さら何を考えても無駄ね。私にはトビーの本当の気持ちなんて解らないもの。
「リズ?どうかしたか?」
「ん?ううん、何でもないわ。ただ、これで婚約者はルーシー様で決まりだと思って。」
スタン、ナイスアシストだわ。
「まだ決めてない。」
「…決めてないという事は、私を選ぶ可能性があるの?」
「ある。」
「……貴族を絵に描いたようなルーシー様が良いのではないかしら。」
「くだらないプライドだけは高い女だからな。」
「やっぱりルーシー様と結婚すべきだわ。私は貴方の事をよく知らないし、貴方もそうでしょう。お互いをよく知る方と結婚すべきよ。」
私は結婚だけは絶対出来ない。
ミリオン侯爵夫妻が損害を被る事になるから。
知り合いという形であれば、これからも会う事は出来る。でも、婚約者として王太子妃としてセドリックのもとにはいられないし、選ばれてしまったら2度と会えない。
最近思う。
もしかして、私の失くしたくないものにセドリックはいるんじゃないかって…。
セドリックがルーシー様と結婚してくれれば、会えなくなることもない。私は何も失わない。
モモホシクズを売ったのが私だと気がつかれる日までは。
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