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離れないために
もうすぐ誰を婚約者にするか選ばなければいけない。
俺が選びたいのはエリザベスだ。
けど、決めかねている。
今日までリズが駆け回っていたのは侯爵の為だ。自分の出自を知られて困るのは自分じゃなくてまわりだから。
もし俺がリズを選べば、確実に解ってしまう。
それは間違いないだろう。
だからきっと迷惑をかける前に何処かに行ってしまう。そんな選択をするだろう。
「どうしたの?」
「いや。べつに。」
トビーを殺してしまった時、うっすら目を開けて『ほんものだ』と言ってくれた。
俺は嬉しかった。
偽物だとか本物だとかじゃなくて、俺を俺だと一目見て分かる子がいるんだから。
『皆を好きになるなんて無理、皆に好かれるなんてもっと無理。』
道理だと思う。
俺が心配症なのは相手がリズだから。
「セドリック様、無理して裏庭に付き合わなくてもいいわよ。」
「無理はしていない。」
「…ならいいけど。」
…王位継承……興味はないし、ハッキリ言って下ろしてもらいたい。
未来は決められていて、俺には自分で選べる道はないと思ってた。けれど、今はそうでもない気がした。
兄がリリーと婚約すれば、俺じゃなくてもいい。
婚約者候補を王位継承権のある者が選んでいるのだから。
無理だとしても話してみよう。
リズが爵位をすてる事なく、家族と一緒にいられる方法。
俺がミリオン侯爵家の養子に入る。
リズの事を家族皆が知っている。俺もリズの事を知っている。それなら出自なんて関係ない。
けれど、俺がリズを選ぶとしたなら『王太子』という身分を捨てなくてもいいだろうとなってしまう。リズだって婚約者候補…しかも父上もその他の者達からも第1候補にあげられている。
何もかも上手くいくはずはないけれど、足掻いてみよう。
俺にモモホシクズを売ってくれた女の子に会えた。どれだけ探しても会えないと思っていたのに。
奇跡だとかそんなものは信じない。
でも、諦めなかったからまた出会えた。
諦めてたら何も得られなかった。
100%無理な事はある。
でも、100%無理じゃない事を諦める事の方が愚かだと思う。
まぁこれは、リズが俺を好きになってくれた時に叶う話。
俺の希望で、都合の言い話だ。
リズは俺に好かれても困るだろうから。
結局、ルーシーを選ばなければリズは離れていく。
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