664人が本棚に入れています
本棚に追加
「殿下、少し2人でお話があるのですが。」
話の途中にお父様がとても真剣な顔をしてセドリックに言った。
「…ああ。では俺の部屋で。」
あっという間に2人は部屋から出ていってしまった。ラッドさんは何かを察したのか付いていってない。
「一体何を話すのかしら。」
気になる…。
「聞いては駄目な事もあるの。リズ、何でも関わればいいというものではないのよ。」
「はい。お母様。」
その通りだわ。あまり詮索するのは止めよう。詮索するもなにも、想像がつかないけどね。
「お母様、ここに来てもうすぐ1年。私はまた家に帰るのだけど、学校に転入するのに試験はありますか?それなら勉強しないといけないので。」
ずっと授業をサボってたなんて言えないわ。
「…それは確認しておくわ。」
「それから、ここで育ててた毒草なんだけど、持って帰っても大丈夫?」
「ええ。」
私はここには残らない。必ずルーシー様を選んでもらう。
最初はミリオン家のためだけだった。でも今は、それだけじゃないって、本当はわかってる。
卑怯だと思う。
私は誰かの為だと言っておいて、最終的に自分の為に私を選ばないで欲しいと思ってるんだから。
・・・・
俺の部屋には侯爵と2人。ラッドは侯爵の雰囲気をみてついて来なかった。
「侯爵、話しとは?」
聞いてはみるが、大体予想はついている。
「婚約者選択…もう誰にするのか決めていますか?」
「いや…。」
侯爵はわかってる。俺がリズを選びたいのだと。
「もし…エリザベスを選ぶとしたなら、何からも守るくらいの気持ちを持って頂きたいのです。」
これは、きっとリズの出自、身分の事を言っている。
侯爵はリズの為なら何を捨てるのも躊躇わないだろう。
「娘の事を…聞いてから決めて頂きたいのです。」
「…いや、大丈夫だ。全て知っている。昔、コチで彼女から『モモホシクズ』という花を買った事がある。」
「殿下がですか?」
「ああ、俺がずっと探してた子だ。……だから迷っている。彼女を傷つけない為には選ばない方がいいのか…と。」
「……」
「俺の選択1つで何もかも壊してしまう。『適当に選べばいい』『誰でもいい』そう思っていたのに、今は誰のために考えて答えればいいのか解らなくなった。」
リズは俺をどう思うだろうか…。
選んでも選ばなくても、俺は気持ちさえ伝える事はしない方がいいのか…。
「『娘を選ばないでほしい』…そんな事は私も妻も一切考えておりません。ただ、選ぶ時は殿下も覚悟を決めてほしいのです。」
エリザベスを守るだけの力があるのか…。きっとそういう事だ。
「ああ、俺はきっとエリザベス以外は選べない。」
変わった女で、強くて、がさつで、けど真っ直ぐ俺を見てくれる。そんな人はこれから一生現れないと思うから。
最初のコメントを投稿しよう!