モモホシクズ

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モモホシクズ

モヤモヤしたまま、婚約者発表の日が来た。 「お父様、お母様、行ってきます。」 私とルーシー様とリリーは陛下に会いに行く。そこで誰を選んだのか聞くことになる。 リリーはない。 ロビン様とお付き合いしているのを、家族が公認しているみたいだから。 ルーシー様か私。 ルーシー様は(リズ)が選ばれると言っていた。けど、そんなのわからない。 「婚約者が決まった。」 「……」 「……」 「……」 「エリザベス、君だ。」 陛下がそう言った。 「……はい。」 目の前が真っ暗になった。 これで、私は何もかも失ってしまう。そうなるかもしれないって解ってたのに。 だって1/3の確率だもの。 「父上、少しエリザベスと話をさせてください。別室で。」 「…わかった。少しだけ時間をやろう。よく話し合いなさい。」 「有り難うございます。では、失礼します。エリザベス、行こう。」 「はい。…失礼致します。」 何処へ行くのかと思えば、セドリックの部屋だった。 「俺に花を売ったのを憶えているか?」 「…え?」 「モモホシクズだ。」 「知ってたの…?私があの女の子だって…。」 「ああ、結構前から気が付いていた。」 「…何故、言わなかったの?」 「本当は一生言わないつもりだった。けど、俺はエリザベスを選びたかった。だから、知らないふりは出来ない。リズが気にしてる事は絶対知られないようにする。」 「…そんなの無理だわ。」 私は靴を脱いで靴下を脱いで見せた。 「貴方が見たかったのは、この足の傷でしょう?」 裸足で歩いてた。傷だらけの足の裏。 「侯爵令嬢にこんな傷があると思う?その他にも小さな傷痕がある。成長して薄くなっているけど。」 「……」 「背中にはナイフで切られた傷痕があるの。どうやっても自分ではつけられない。その傷をつけたのは誰なのか、そんな問に行き着くでしょう…。その時、侯爵夫妻がやったと言われる。昔ついた傷だと言ったら、私の事を探る人も出てくるわ。」 どうして選ばれてしまったんだろう…。 これでもう、誰とも一緒にいられないわ。 婚約者を辞退なんて絶対に出来ない。かといって、ミリオン家を窮地に貶める可能性はあっては駄目。 この発表には出席する。 けど、それでさよならよ…。
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