663人が本棚に入れています
本棚に追加
モモホシクズ
モヤモヤしたまま、婚約者発表の日が来た。
「お父様、お母様、行ってきます。」
私とルーシー様とリリーは陛下に会いに行く。そこで誰を選んだのか聞くことになる。
リリーはない。
ロビン様とお付き合いしているのを、家族が公認しているみたいだから。
ルーシー様か私。
ルーシー様は私が選ばれると言っていた。けど、そんなのわからない。
「婚約者が決まった。」
「……」
「……」
「……」
「エリザベス、君だ。」
陛下がそう言った。
「……はい。」
目の前が真っ暗になった。
これで、私は何もかも失ってしまう。そうなるかもしれないって解ってたのに。
だって1/3の確率だもの。
「父上、少しエリザベスと話をさせてください。別室で。」
「…わかった。少しだけ時間をやろう。よく話し合いなさい。」
「有り難うございます。では、失礼します。エリザベス、行こう。」
「はい。…失礼致します。」
何処へ行くのかと思えば、セドリックの部屋だった。
「俺に花を売ったのを憶えているか?」
「…え?」
「モモホシクズだ。」
「知ってたの…?私があの女の子だって…。」
「ああ、結構前から気が付いていた。」
「…何故、言わなかったの?」
「本当は一生言わないつもりだった。けど、俺はエリザベスを選びたかった。だから、知らないふりは出来ない。リズが気にしてる事は絶対知られないようにする。」
「…そんなの無理だわ。」
私は靴を脱いで靴下を脱いで見せた。
「貴方が見たかったのは、この足の傷でしょう?」
裸足で歩いてた。傷だらけの足の裏。
「侯爵令嬢にこんな傷があると思う?その他にも小さな傷痕がある。成長して薄くなっているけど。」
「……」
「背中にはナイフで切られた傷痕があるの。どうやっても自分ではつけられない。その傷をつけたのは誰なのか、そんな問に行き着くでしょう…。その時、侯爵夫妻がやったと言われる。昔ついた傷だと言ったら、私の事を探る人も出てくるわ。」
どうして選ばれてしまったんだろう…。
これでもう、誰とも一緒にいられないわ。
婚約者を辞退なんて絶対に出来ない。かといって、ミリオン家を窮地に貶める可能性はあっては駄目。
この発表には出席する。
けど、それでさよならよ…。
最初のコメントを投稿しよう!